300字SS 『仮面(マスク)』 お題:飾る

上記のイベントに参加します。

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仮面(マスク)


城壁の急峻なところをわざと登りビニールを開けると
香りは一瞬で風に消された。
パンを頬張りながらなぞる石の隙間には小さな菫が咲く。
それは工芸品のように精巧で徹にカーニバルの 仮面( マスク )を思い出させた。

「お飾りだ」
「え」
「咲いたのは受粉せず閉鎖花という蕾が自家受粉でタネを作る」


事実を事実として言っただけの勝の言葉が
かすかな胸騒ぎを覚えさせるのはなぜだろう。
しかし次の瞬間、釣竿を持った伯父たちを目ざとく発見し
徹はそんなやりとりをすぐに忘れた。



思い出したのはホームだった。

ホームの地面から割り出て咲く菫と勝をのこし
振り返ることもできずに徹は列車に乗った。

閉鎖花のしたたりを背に風を受くちいさき盾の深きすみれよ


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テキレボが近いので委託する『泣草図譜文鳥編』のダイマです!
正直に言っちゃうと、別のことをしている余裕がないということでお許しください。
なのでこのイラストはお話のラストシーンを「飾る」ことになります。
ちょっと使いたい設定が小浜駅にありましてね、この見送りの勝くんがあるものに座ってるシーンなんです。なんだと思います?

どうぞ、それはテキレボの見本をめくって確かめてくださいね☆
あっ、お買い上げいただくほうがそりゃ嬉しいですよ!よろしくお願いいたします。

ではまた次回300字SSで。