花マップ企画 in テキレボ7

このページは第7回テキストレボリューションズ、通称テキレボ7における有志企画「花マップ」のサイトとなります。
7月16日の海の日(祝日)開催の同人誌イベント、テキレボ7についての詳細はこちらを
第7回Text-Revolutions 開催概要 | Text-Revolutions


当日わたしのサークル・花うさぎは委託で手製本を頒布予定です。うちのサークルは毎回なにかしら花をモチーフに作品制作をしますので、同じように花を使った作品をリストアップして宣伝することで同志を増やせたらいいなと企画を主宰することにしました。また、主宰者が委託参加なので当日担当に豆塚エリさんの協力をいただくことになりました。豆塚さんにこの場を借りて御礼申し上げます。お引き受けいただきありがとうございます。

☆花マップ企画について

主宰 うさうらら @usaurara (on twitter)
会場担当 豆塚エリ @mamen325 (on twitter)
テーマ 花  花が印象的に使われた物語を集め、マップにして会場配布します。

・長期的にテキレボで開催を予定していますので、ゆるく、できる限り主宰者も参加者も負担の少ない企画にします。
・目的として「花が出て来るお話を探すお手伝い」を掲げます。情報が過多になってしまうのを避けるため、本のタイトルとサークル名と花の名前のみ表示します。(個人の書き手の名前は載せません)
・申請後は特に何もしていただくことはありませんが、TwitterでのRT等にご協力いただけると助かります。
・当日は各自で配布場所にマップを取りに行っていただきますようにお願いします。また、一週間前にはウェブ上にあげるとともにネプリでの配信を予定しています。
・当日までの運営は主にツイッターで、全面的にうさうらら(twitterアカウント@usaurara) が行います。ご質問やご意見、ご遠慮なくどうぞ。

☆参加条件
・花が印象的に登場する
・実在かどうかは問わない
・物語中、比喩でなく概念として花である
・ゴブガリ案件OK
・1サークル1タイトル限定


☆参加申し込み
ツイッターのモーメントで指定の投稿へリプライ&DMをください。

ツイッターアカウントをお持ちでない場合は以下の要領でお願いします。

1 以下の文面に必要項記入のうえコピペしたもの

ココから↓
#花マップ に参加します。
1サークル名 
2本のタイトル名
3登場する花の名(複数可)

↑ココまで

2 本の宣伝・紹介文を100字程度で書いたもの

1と2をあわせて usaurara☆yahoo.co.jp (☆は@に変換ください)までメール送付ください。
ご参加お待ちしています。

『恋歌』 お題:試す

上記ツイッター創作小説企画に参加します。

『恋歌』

ウィンドウに硝子壜がつんと立っている。ちいさな櫻貝が描かれたラベルから微かに歌声がきこえた。横に「未知の世界へあなたを誘います。お試し可」とある。

「いいですか?」

少女は店員に促されるまま奥の椅子に座った。女が蓋をひねると、きつい臭いが鼻を突く。それは爪が桜色にかわるたび濃度を増し、ついには少女の最奥まで侵入した。ゆだねる、うばわれる、、、波のように反復する。
「これは櫻貝から作られているんです。二枚貝は、、、」


波音を聴きたい。ピンクの爪がそんな気にさせたのだろうか。入水の目撃談はどれも奇しい。何者かに両手を引っ張られているように見えたという。


二枚貝はいつも片割れと引き合っているのです」


☆☆☆

昨日だったか、インドの病院で酸素ボンベかなんかを運んでいたひとがMRIの電磁に引き寄せられて、酸素がどうにかして爆発したあおりで死んだというのを読んだ。人間どんなことで死ぬかわからんと思った。
それにくらべりゃずいぶんこれはロマンチックです。思春期特有のなにかがそうさせた、ということも考えられますしね。

ところで、爪を塗ってもらうというのはとてもとても性的な行為だとわたしはずっと思っていたので、それがこのように世の中であたりまえの商売と化してしまってちょっと驚いていたりします。どうでもいいことはどんどん進むよねまったく!
ではまた(投げやりなオチですみません)次回お会いしましょう☆

ここすとの周辺案内

前回紹介したイベント ここすと が会期延長して明日まで開催しています。通販も明日までです。
hamabi.net

せっかくなので周辺案内など。


☆焼津に前泊して浜松入りし、朝一でココモさんへお邪魔してブランチ。そのあとすぐお隣のホテルコンコルドへ行き早めにチェックイン。
お部屋、こんなの。前泊の焼津が安ホテルだったので天国だこれ~~と寛ぎましたw
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このホテル、割と安くて大阪までの高速バスが日に2本出ているんですよ。(なので次回はあちこち回って最後を浜松にしようと思いました)


そのあとまずは目の前のお城へ。ココモさんから見えていた緑はこの庭園、桜が咲くと綺麗でしょうね。
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荒々しい積み方をした青っぽい石垣をのぼって
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てっぺんの鳥居からホテルを振り返ります。
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お城を後に駅の方向へいく途中の絵本屋「キルヤ」さん。
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大人が楽しめる絵本も多く取り揃えています。行ったときはふくろうの手作りをしている作家さんの作品が飾られていて、ワークショップの案内も貼っていました。かわいい本、綺麗な本がたくさんの落ち着いたお店です。


そこからさらに駅方面へ下っていきます。繁華街のなかにいかにも海辺の街らしい商店がありました。
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一応店舗もあるんだけど本業は別の場所へ移してやっているそうで、この建物は地元の交流と地域振興のために開放しているようです。


そこからすぐ近い文具店 ブングボックスさん。万年筆の専門店です。東京にも店舗がありますがここが本店だそう。
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オリジナルのインクを眺めるの楽しいんですよね。さほど大きなお店ではないのに試し書きできるように机が置いてあるんです。いくつか試させてもらったりして、結局重いのでオリジナルではない小さい壜の桜色を購入しました。オリジナルインクの一番売れ筋はこの「初恋」、ブルーです。店のオーナーが廃盤になったインクが恋しくて復活させるべくオリジナルを作ったという話など、いろいろお話をお聞きしました。



グルメも。この日はおかさんと落ち合って、餃子を食べることになっていましたのでココモさんおすすめのフォレストガンプへ。
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浜松餃子とは。具がみっちり、味しっかり。そのままかお酢に胡椒で。もやしが必ずついてくる。


おかさんと別れてから駅の土産物コーナー物色。
抹茶のプリン。買って帰ってホテルでいただきました。これはクリーミーで抹茶の苦みもそこそこあり美味しかったです。
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そして味噌饅頭と抹茶クッキー。みそまんは店によってかなり違うらしいですが、これは上品なお味で食べやすかったです。抹茶クッキーはいまいちかなーw
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浜松ではこのほかに楽器博物館に行きました。鍵盤類がさすがの充実ぶりでしたよ。おかさんから聞いて、スーホーの馬頭琴も実際に弾いてみることができました!バイオリンをやったことがあるからいける!!と思ったら意外と鳴らないw ひどい音ww あと、おもったより小さかったです。雄大な音のイメージで楽器もちょっとおっきいんだと思っていました。バイオリンと変わらないかんじです。
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体験できる楽器はそんなにないけど観るだけならかなりの量の陳列。ゆっくり時間を用意して行ってくださいね。綺麗な楽器もたくさんあって眼福です!

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以上、浜松のご案内でした。
わたしの委託品はおかげさまで完売したのですが見本が置いてありますし、他にも読み応えのある本、かわいい作品などたくさんあります。お近くの方はぜひお立ち寄りくださいね☆


追記:通販は2月5日まででした。訂正いたします。ご利用はこちらからどうぞ
hamabi.net

ここすと in 浜松 に行ってきました

あけましておめでとうございます! 
前回ご挨拶を忘れて失礼しました。本年もよろしくお願いいたします。

さて、今日は前回ご紹介したイベント「ここすと vol.1」に先週末お邪魔した様子をお届けします。21日までの開催なのでイベント概要をもう一度貼ります。会期終了後には通販も行うようですのでご興味持っていただけましたらサイトをチェックくださいね。
イベント開催地 アートサイドカフェ ココモ
        期間 1月9日~21日      
        所在地 静岡県浜松市中区元城町109-12
        サイト http://hamabi.net/cocomo/


この記事はまず浜松のココモさん訪問についてざっくり時系列で書いて、最後にあちらのスタッフ田中さんとお話した内容を振り返りつつ新刊『架空便』について書きます。
☆☆☆

今回の旅程は 焼津(泊)→浜松(泊)→浜名湖(浜松に戻って帰路) の2泊3日新幹線の旅。今日は行程のうち、ここすとさん訪問部分だけピックアップしていきます。

日程は急遽決定しましてほとんどノープランなまま金曜朝9時台の新幹線へ。ダイヤが乱れていたため「こだま」で。乗ってみてわかったけどこだまでも座席の前後間隔は結構あるんですね。うちのキャリーケースが抱えられるか心配だったんですが余裕でした。座席を通路側にして失敗したw 今は窓側にコンセント差込口があるんだなあ。
お昼は折り返し中継地点の静岡構内で買った東海のサンドイッチ。今回イベント合わせの新刊『架空便』がトリコロールカラーなのでピッタシ~というオカワダアキナさんからの情報で入手。これはゆで卵の黄味が少し多めの配分なのかな? とんがったところは無いけどコクがあって美味しかったです。パッケージデザインそのままのレトロ風味。

浜松駅に降り立ってみてココモまでが微妙に遠そうなのとせっかくの機会なので遠鉄*1に乗ることに。(キャリーなし、歩きやすい靴なら問題なく徒歩OK。あと、ココモさんはお城の近くなんですがお城のへんがやや丘になった地形なんですよ。駅からはゆるく坂道になっています)

下りてからはお城の緑と横の高層のホテルを目印にゴロゴロと歩くこと約15分で動画で見たかわいい建物に到着。主宰の鈴木さんはお出かけ中で、田中さんが案内をしてくださいました。私はココモの階段で着物の裾を踏みまくりとても恥ずかしかったですw 展示そのものがどういうふうかというのはツイッターで見ていただけるのでこちらをどうぞ。


開催前に一通り作品に目を通してすべてに紹介ポップを貼ってくださっています。また、作家アンケートを事前に回答していたんですが、それが並べて貼られていて出展者のみなさんがどういう方なのかお互いを知る手掛かりになってよい試みだと思いました。他にもいろいろと手間をかけてくださっているのがわかって大変ありがたいなあと思いました。

二階会場、南向きの窓は城の庭園に面してて良い環境。春の桜が美しいとか。

窓の下にブルータス彫像とストーブ、まわりで寝ている子たちは人形でした。よく見るとレコードプレーヤーがあるの、わかるかな。レコードを持ってきたらかけますよっておっしゃってました。(次回があれば持ってこようかと本気で考えた) レコードと本を持ち寄っての読聴会?みたいなのもやったら楽しいんじゃないかなあ。

二階のテーブルで朝昼兼用のカレーと珈琲をいただき、一息ついて周辺スポットのチェック。(会期中は飲食会計が100円サービスになるそうですよ!)

そして話題の?オマケ的な例の屋根裏部屋です。この日は午後からこのコレクションを取材に地元ラジオが来るとのことでした。主に収集したのは鈴木さんのお祖父さまだそうですがよく見ると結構収集年代が広くて面白かった。田中さん曰く「埃を被っていたモノを手入れして蘇らせることに喜びを感じるタイプの収集家だったらしくて」にむっちゃ共感しましたw わかる、わかるわー。(昔から骨董好き)




以上で一旦ざっくり紹介を終わります。ココモさん周辺の絵本やさん、万年筆やさん、餃子やさん、楽器博物館についてまた別記事に書きますね。併せて読んでもらってみなさんに浜松への親近感が湧くとよいな!


☆☆☆
ここからはスタッフ田中さんと雑談した出展作品『架空便』の話を含む創作話です。オカワダさんへの報告の意味もあり、とりとめなくメモしていきます。読んでみたい方はどうぞ。

田中さん 「2冊のうち赤(=オカワダアキナさんのパート)のほうがより日常的なかんじですね」
取り扱っているネタがおかさんらしくしっかり地に足の着いたものなので、そうおっしゃっているのだと思われました。わたしのほうは今回チュウニ的なポエム書く気持ちまんまんだったのでちょっと幻想的なんですよね。薄々それは思ってたけど指摘されるとあらためて「ああ、第三者にも明確なのだな」と確認しました。私がなぜファンタジーテイストに寄せたかというとこの青のテキストの骨子が過去のリアルなできごとの書き換えだったからです。これは成功しているのかどうかまだよくわかりませんが。

田中さん 「絵と文章両方をされているわけですがどちらを自分では主体に感じて制作されているんですか」
とよく受ける質問をいただいて「それは作品によって変わりますし、できるだけ双方が同じ力で引き立て合うような作品が作りたい」と答えました。そこから「出店先になかなか思うようなイベントはなくてどこへ出しても必ずはじっこのほう、、、」という話もしました。

田中さん 「この中で好きな絵はこれとこれです(青は缶と階段、赤は千切れた壁を指して)」
自分がこの本を作るにあたってイメージした画家の名前がポンと飛び出してとても驚きました。ああ、やっぱり絵の人だ!って嬉しかったです。そして抽象と具象の話とかをしました。

あと、手がかかっているのにずいぶん値段が抑えてありますね。これはすごくお買い得な気がしますよと言っていただいたり、何かの話から「僕はこれは詩だと思って読みました」ときっぱりした語調で言われて嬉しかったです。


やはりギャラリーのスタッフを任されている方だけあって、話し上手聞き上手ですね~田中さん。そのあと鈴木さんともお話しましたがとても親しみやすい気さくな雰囲気で話せる方でした。お二人の雰囲気とカフェの雰囲気とが相まって居心地のよい空間になっていると思いました。


さらにオマケ
☆☆
ここからは主にオカワダさん宛てです

夕方にオカワダさんと落ち合って初顔合わせをしたもののなんだかろくにマトモな話ができないままで「これじゃまるでくるみちゃんの話を地で行ってるじゃないか!」と内心自嘲しながら餃子を口に押し込んでいたのは、オカワダさんの新幹線乗車時間が迫っていたためだけではなくてこういった会話の時間を与えていただけたことも理由にあるように思います。
わたしはなるべくオンオフを繋げないで活動する方針なため、これまでリアルで創作の話をするチャンスは皆無だったわけで欲求不満が貯まりまくっていたんですが今回初めてそんなお話をした相手がとてもうまく話を引き出してくださる方で、ましてや絵を描く方だったのはありがたいことでした。「アクセスさえすればそういう相手はたぶんどこにだっているはずだ」から「アクセスさえすればそういう相手はたぶんどこにだっている」になったのが嬉しいです。

おかさんとは特に『昨日のかみさま』の話がしたかったし、そこからひろげてさまざまなことをお伝えしたかったのですがそれを話題にするほどの時間はなくてヒラパーの話などしていたのが今から考えると初デートの高校生みたいでかわいいですね!ww そんな機会が訪れるのかどうかわかりませんが、あったら嬉しく思います。これからもよろしくお願いします。このたびはイベント顔出しに遠いところから駆けつけてくださりありがとうございました。御礼申し上げます。

*1:遠鉄=遠州鉄道は赤に白の斜線が入った2両編成の私鉄で、浜松からしばらくは高架を走ります。駅改札を入るとき何十年ぶり?に切符をぱっちん切ってもらって「おおお」ってなった。で、2つめの駅で降りたら車掌さんが駆け寄って「切符ください」って言うもんだからすごい慌てた!w そんな遠鉄にぜひどうぞ。

ここすとin浜松 に委託出展します

1月9日から21日まで静岡県浜松市にあるカフェギャラリー・ココモさんで手製本2種類を委託頒布します。
インスタグラム https://www.instagram.com/cafe_cocomo/?hl=ja をご覧いただくと雰囲気がよくわかるのですがゆったりやさしい空気が会場に満ちていて、手作り感のある本をめくりながらお茶をするのは楽しいだろうなあって思います。遠いけどわたしも会期中に旅行がてら足を運ぶつもりでいます。お近くの方はぜひいらしてください。また、会期後に通販(送料一律600円のみ必要)が予定されていますのでよろしかったらご利用ください。こちらから→
http://hamabi.net/cocomo/tuuhan.html



イベント開催地 アートサイドカフェ ココモ
        期間 1月9日~21日      
        所在地 静岡県浜松市中区元城町109-12
        サイト http://hamabi.net/cocomo/

出展イベント ここすと vol.1
hamabi.net

出展作品紹介
☆詩画集 架空便(エア・メール) オカワダアキナさんとのコラボ作品
 赤と青の2冊組 白い函入り 1200円
 
 文章は一冊がうさうららで一冊がオカワダアキナさん、絵はどちらもうさうららが担当しました。相聞のようにどことなく響きあう2冊が、読む人の「遠い日」「遠い人」への想いを引き出してくれたらいいなあと思います。




☆短編アンソロジー「べんぜんかん」簡易版
 紙表紙バージョン 和綴じ手製本 240円
 布貼り表紙版でとても好評いただいた六角形アンソロジーの簡易版です。六角形をモチーフに6人がそれぞれ「ちょっとふしぎな話」を書き、そのお話をイラストが繋いでゆきます。オールカラーの内容は簡易版といえど充実していますので、ぜひお手に取ってごらんください。


湛む


水溜りがあるとしゃがんで覗きこむ。地面にぽっかりあいた穴は、どこまでも落ちそうで怖く美しく目が離せない。そんなふうに小さいころから水に湛(しず)む夢想が好きだった。
さて、今日はとある廃墟のことを話そう。
昭和の初めに港を見下ろす山に建ったホテルは、戦争での一時休業と再開を経て廃業となっていた。訪ねたのは廃業から更に10年経過した初夏で、すでに写真集が出るほどその筋では有名だった。熱望する友人につきあい、何も知識を持たずにでかけたのが幸いしたと思う。

夏草を踏み分けて辿りついた廃屋はドアをひとつ潜るたびにひんやりした湿り気を増して洞窟のようだった。突き当りの部屋に入って息を呑む。うす暗い部屋の窓一面がエメラルドグリーンにゆらめいていた。デジャブ――海に沈んだ客船の一室、映画で見た光景。

それがわたしのロマンチックな幻想でもないのだと知ったのは、その後詳細を調べてからだ。建物は神戸が一番華やいでいた時代(誕生した1930年はアールデコの全盛期)に、花形だった大型船を模して造られていた。内部装飾も、のちにだが廃船になる豪華客船の内装を買い取って整えたものらしい。その構造や細部デザインのあちこちが「豪華客船」を匂わせていたのだ。

 
 
 
  

往時にはまわりの木々も手入れがされ、内部も明るくきらびやかだったにちがいない。こんなふうに――海底で浚われる船のように――緑に湛む姿を、設計者は想像もしなかったんじゃなかろうか。
暗がりをくぐりぬけ、最上階の出口を光の方へ踏み込んだとき足元から真黒な影が次々と剥がれていっせいに空へ飛び立った。黒い蝶の群れ。むこうには海。


追記:注意として書いておきますが、おおかたの廃墟とおなじく建物に入れば不法侵入となります。また現在建物はしっかり管理がされ、保存のために寄付を募って見学会など催されているようですので興味のある方はお調べください。

「うちの本」について語ります

こんばんは。今日はツイッターでの企画創作アドベントカレンダーに向けて書きます。
adventar.org
アンケートによりましてテーマは手製本です。+ 予定している「シズムアンソロ」のこと。まず自己紹介を。

絵と文をかくのが好きです。アナログ絵画歴は長いけどデジタルのほうはやっと10年。文は短文書き。持続力構想力がないですねw ときどき短歌を日記がわりに詠みます。Twitterで参加者を募集してイラストのネプリ「短歌ハッシュ」を毎月配信しています。(ハッシュタグ「短歌ハッシュ」参照)
この2年は自宅コピー機での手製本を同人誌イベントで委託しています。個人で活動するほか磯崎愛(id:florentine)さんとサークル「花うさぎ」でも活動。いずれにしても少部数生産の手製本です。過去作品書影をいくつか詰め込んだ画像で雰囲気を見てください。

デザイン
みればわかるけどだいたい地味ですw 昔から地味好み。シンプルイズザベスト。たぶん一般的な同人誌の方向とは逆を向いて走っています。そしていわゆるハンクラが好きっていう層の好みとも違うスキマ産業です。しゃあない、好きなものしか作りたくない。
さて、うちの手製本は綴じ方で2タイプに分かれます。
1、和綴じタイプ 草紙的な気軽な軽やかなデザイン。@400円~500円
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2、蛇腹タイプ 和風味が強くシックで高級な印象なことと、バラバラって扱いづらいんで函入り。@500円~600円
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この2年で

うさうらら個人誌「泣草図譜シリーズ」  →ラフ
花うさぎコラボもの「海柘榴シリーズ」  →シック

という方向性が確立しつつあります。


素材


表紙
表紙の表面は布だったり紙だったりします。これは装丁で一番雰囲気を左右するので私の場合は本をつくるときにここから始めます。装丁がしっかりしないと途中でグラついて進行が一直線に行かず効率が悪いのでほとんどの装丁は構想を練る段階で決めてしまいますね。制作に入ったらよほどのことがない限りデザイン変更しません。
最近は最初のデザインから最終の仕上がりまでかなり忠実に実現できるようになってきたから、尚更最初のインスピレーションが大事に思えています。

表紙は布貼りを今期からやっていますが、好評なので継続すると思います。布はリサイクル着物を解体して使います。解体と洗いとアイロンと芯地貼りをして20~30冊ぶんの表紙をカット。はい、手間ですね。どんだけ布が好きなんだ!っていう人にしかできませんw
着物のリサイクル品はシンエイという店のネットショッピングで購入しています。絹物でも一枚1500~2000円くらい。興味あれば検索を。


本文紙
本文紙はたいてい大直さんの簾の目。この紙は薄くてコピー機印刷するとき一枚一枚手差しをしないといけません。これがうちの手製本のムダに手間がかかっている理由のナンバーワンです。だけど他にかわる紙が見つからないのでしかたない。

・A4で一枚10円
・肌理の細かい和紙である(細かい線画がしっかり再現できる)

この2つを満たすもので坪量80~90くらいのがあれば、ぜひ教えていただきたいです。紙が薄いと蛇腹に仕立てるにも別の躯体が必要になって手間がかかるんですけど、価格は抑えたいのでしかたなく。大直簾の目は10円の紙としてはインクの「ノリ」がよくて線の再現がすばらしいの。。。


価格
一口に手製本と言ってもいろいろです。前回記事で述べたようにうちは高級な仕立ての希少な本を目指してはいません。難しい綴じをやっていませんし、接着はスティックのりと両面テープです。「一般的な材料と簡易な製本で、できるだけいいものをつくる」そして「大衆的な価格で提供する」ことをめざしてます。現在の版型(A6)とページ数で続けるなら今後も単価600円までに抑えたいなあ。



道具

道具は特殊なものはほとんどないですよー。道具箱公開!

ダン箱の低いのを2つ重ねて収納、下には道具を上には作業中のものを。
写真は下の段の中身を拡げたものです。左のものさしからぐるっとまわっていきます。

ものさし3種類、もっと大きなステンレスのものも持ってて壁にぶら下げてあります。この中で印付けに一番使うのはアルミ(右)真ん中は100均のステンレスでカッター用、左のアル助は化粧裁ち用と役目があります。
へら 和裁のヘラは紙を扱うには固くて傷めてしまうので木製のへらのほうを使っています。これは陶芸用の家にあったやつを削って薄くしました。手製本でまず用意したほうがいい道具は?って聞かれたら「へら」ですね。紙を綺麗に折るために必須です。
穴あけ用千枚通し 家庭の裁縫用で間に合います。でも太さの面でちょっとだけ製本用がいいから買いました。
ポンチ どこにでも穴をあけることができると便利です。そして穴の大きさが事務用のパンチでは大きすぎて役に立たない。安いので買うといい。
はさみ 小さい方はさきっちょが薄くて細かいものを切るときとても使いやすい。紙細工をするなら持っていた方がいい。 大きい刃渡りはざくざく切りたいとき用の100均もの。
ホッチキス 回転するタイプです。安いし一応持っている。
接着材  本格製本ならボンドと大和糊を混ぜたのを水溶きしながら塗りますが
   ・インクジェットで印刷している(水に弱い)こと
   ・表紙を軽く柔らかくしたいこと
   ・手軽
   という理由で、うちはスティックのりと両面テープです。
刃物 カッターは刃のしっかりしたのと薄くて角度の小さい(カーブ用)のを用意しています。左端の丸い持ち手のは伊勢型紙の本場で買ったもの。製本にはあまり使いませんけどね、カーブを切るなら刃物も下敷きも専用のものがとてもよかったのでおすすめ。右側の小刀二本は木工用ですが使ってみたら化粧断ちに最適だったので仲間入りさせました。
・その上はペンチと使用済みの刃を入れるケース。しょっちゅう変えないといけない。(めんどくさい)
・左下の角材はサンドペーパーを巻くための。バレンは紙の貼り合わせのとき用。
・左手ダン箱にひっつけてあるのはおなじみクリップです。20個くらいあります。製本では必須かな。
・右手カラーマステ。模様のはほとんど買わない。そして両面テープは幅をいろいろ揃えています。

これを100均のスタンドに立てて収納して、こうじゃ^^

食卓の脇に常時置いてあります。小さい子がいたら置けないですけどねえ。




制作の工夫(うちのオリジナルと思われる部分)

うちの本の売りはどこかなあっていうと製本方法では背表紙部分の工夫でしょうか。自分で勝手に考えてやっているのですが、デザインの選択肢が増えるし見た目がかちっと決まるので気に入っています。和綴じの場合上下に小さい面積のものを貼るけど、あまり古風な「和」になってしまうのは避けたいしこのほうが綺麗かなと。面倒なんですが、こんなかんじで紙を作って挟む。こういう作業もヘラが大活躍です。


手製本についてはこんなとこでしょうか。何か質問があったらどんどん聞いてください。なんにも隠すほどのワザはないですしw


☆☆☆

さて、ここまでお読みいただきありがとうございました!ここからは今後のアンソロ募集について少しだけお話しを。全情報は10日くらいにツイッターで「告知&募集」として流しますので興味のある方は気に留めておいてくださいね。数日募集して多数の場合はあみだくじで決める予定です。お気軽にどうぞ^^

シズムアンソロ 

とりあえず今日ツイッターモーメントを作りました。装丁サンプル画像や紙の種類など手製本情報もつりさげていくつもり。

そして、うちと同様に花のアンソロを編むご予定の豆塚エリさんと相談してテキレボ7で「花マップ企画」をやることにしました!
当日会場でマップを配布します。主宰をわたしがして、当日担当者は豆塚さんにお願いする予定です。みなさん花の出て来るお話を書いてね☆
そして豆塚さんですが、ジャンル混合の花のアンソロを予定しているそうです。小説の場合4000字くらいまでで2月末から3月中旬締め切り予定、今月中に参加者募集するそうですよ。こちらも要注目!

以上、手製本語りとアンソロなど今後のことをお知らせしました。長々とおつきあいありがとうございました。ではアンソロのご応募、10日以降ツイッターにてお待ちしております!