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300字SS 『快楽』 お題:月

短編小説 イラスト

クレーターのひとつから微かな気配がしている。
仰向けの裸体を突きとめたものの、その下腹部で手が動いているのに気づいて目を逸らした。

「ば、、か、、、」

上ずった声は従兄の勝だ。

「何してるの」

口をついて出た言葉に焦る。
彼は平然と続けた。

「見ての、、、通り」
「隠れたいなら裏側にまわれば?」
「ばか、、それじゃ、、、地球からみえ、、ない」
「隠れたいんだろう?」
「全然見えないんじゃ、、、意味、、な、、い」





たしか夢の前日、窓際で萎れているのを

「まったく花とは性器そのものだな」

と彼が嗤ったのだった。


そういえば僕は月下美人の開花をまだ見ることが叶わずにいる。



<了>


「快楽」は月下美人花言葉です。
北陸アンソロジー『ホクリクマンダラ』掲載の「海柘榴」からのスピンアウトを「月」「花・月下美人」「快楽」で書きました。