300字SS 『フライト』お題:雲

上記のイベントに参加します。



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『フライト』


誰?ここで何してるの?

手を貸しに来たわ

僕、呼んでないよ。ぼんやり考え事してただけだ

うん、でもその底にはっきりがあったのね。ちゃんと聞こえたわ


彼女は、目の前を塞ぐ木の板に雲を描き始めた。


これまでいろんな雲を手伝ってきたわ。洞窟や大きな教会のフレスコ画や立派な肖像画のうしろ。こういう場所もよくあるのよ


狭い木箱の中で雲描き職人はあっという間にイメージ通りの雲を描き、僕に胸を張った。飛行機やミサイルならそこそこ描けるのに、毎日見ていた雲が描けなかった僕は心からお礼を言った。「らしく」なったよ、ありがとうって。


そうして僕は雲と一緒に高く高くのぼってほんとうの雲になった。

たんたん短歌 短歌の目/8月

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こんばんは。またまた駆け込みます!よろしくお願いします。

短歌の目のイベントについては↓下記リンクをクリックください。

短歌の目8月のお題です - はてな題詠「短歌の目」


1流
くさぶえの心細さがあるふしぎ流離譚とかピューリタンとか


2囃
呟けば囃子言葉となる川を 珈琲碗( コーヒーカップ )でくるくる下ろう


3フラット
夏休みさいごの日となり豆腐屋のラッパはちょっとフラット気味で 


4西瓜
西瓜(にしうり)と南瓜(みなみうり)だけある国の北東がわにミサイルは墜つ


5こめかみ
安直はいかんと由来をぐぐってみたところ「こめをかむからこめかみ」ですって


自由詠み 怪談
この家は消したはずの灯がともる台風かぜが吹く夜にだけ


☆☆☆

自由詠みにいつも苦労します。やっつけでやるからですね、知ってる><
手も足も出ないので事実を書きましたw

さて。写真は夏の盛りに京都で撮った蔦の緑です。夏休み最後の公園はすっかり秋の空気に満ちて、蝉の声も子供の声もなくしずかでした。
読んでいただきありがとうございます。ではまた次回お会いしましょう!


気持ちがよくてちょっと不安な世界をどうぞ ――オカワダアキナさんの本

 紙をきれいに剥がされた針金のポイは、すぐに手作りとわかるやわらかな曲線をしていた。
知り合いのたこやき屋は金魚すくいもやっていて、わたしはよくそこへしゃがみこみ腕を浸して用済みになったポイを弄んで暇を潰した。意味もなく輪っかに水をくぐらせつづける。無意味だけどキモチイイこと。
先日オカワダさんと金魚の話をした。そのまえには海辺が舞台の作品を一緒に作らせてもらい、そのまえには水玉の話をしていた。どうもオカワダさんのまわりは水だらけなようだ。なら「水」というモチーフが好きなわたしがオカワダ作品を好むのもそりゃあ当然と納得する。さて、今日ははじめてのひとにもその作品の魅力をお伝えしたいのだけど何から話そう。

 ご本人がファンを公言しているせいもあるが、オカワダさんの文章にはほんのりムラカミハルキの匂いがする。じつは自分はちょっとハルキが苦手なのだけど、オカワダ世界は細部で似つつも全体としてはさほどそれを感じさせないでくれる。「計算し尽くし統制しきったあとの夾雑物のない居心地悪さ」とでもいうようなあの感じがない。「そりゃあそうでしょう無理言わないでください、うささん。そんな大望持ってなんかいません!」とか、あるいは「やりたいけど自分にはやれないと潔く諦めてますよ!」とか、ご本人はおっしゃるかもしれない。が、わたしにとっては理由はどうあれこのことが幸いだ。(この部分についてはもっと強くそのやさしさについて触れたいが、また別の機会に)
では「計算や統制のない世界」なのかといえばそれも違う。計算や統制は別の意味でしっかりされ、読者は躓くことも不要に迷うこともない。

眼に入ったときどんなふうか。
音にしたときどんなふうか。
イメージとなったときどんなふうか。
それらがいつどこでどんなふうに重なり合うか。

そういったことが事細かに練られている。
詩のようである。散文のようである。そしてたしかに小説である。
絵のようである。音楽のようである。だけどたしかに小説である。


 そんな魅力的な作品群のなかから、夏のオワリにおすすめな「水ギョーザとの交接」の話をしよう。
14歳の少年と母親の弟である叔父さんとのセクシャルな交わりをストレートに描く。未成熟な主人公の語りによって真理をあらわにするのは裸の王様と同じだ。でも童話じゃないからオカワダ世界の語り手は純粋無垢なこどもじゃない。己のなかにも同じ罪があることをすでに自覚しつつ未だ社会の枠からは逃れてある、そんな微妙なとしごろの語り手がときどきラインを踏んで語ってしまう。それが楽しい。ネタバレを完全回避しながら雰囲気を伝えられる例を引こうか。「水ギョーザとの交接」の続編の宣伝コピーだ。
「夏休みにセックスしてしまいそれきりだった叔父さんが、抜き打ちで家にやってきた。ちゃんと好きだと言いたいのに、言葉より先にちんこが出てしまう!」
1行で終わらす宣伝コピーがこれなのだから中身はお察し。しかしハチャメチャだからこそ、先に述べた本当に見せたい奇麗なものが際立ってくる。

さて、終盤では主人公がくたびれた肉体を持て余す叔父に語りかける。綺麗だよ、と。
綺麗なものに接すること、その気持ちを頭の中で言語化すること、さらに言葉にし相手に伝えること。これもまた現実の大人には難しい。とても勇気が必要だ。だから読んで励まされる。励まされて口にする。そして今これを書いている私自身が、まさしくそうなのだ。
オカワダさんの作品の多くは、読むと股の間にすよすよと風が吹く。気持ちが良くて、でもちょっと不安になる。いつの間にかパンツを穿いてしまった猿たちがひとときその感覚を思い出すための、とてもステキなちょとイケナイ本。表題作はそんなタイプのオカワダ作品の代表だ。ぜひ。


↓今週末のイベント@あまぶんでの作品ページはこちら
http://necotoco.com/nyanc/amabun/bookview.php?bookid=171


追記:上記作品は男性同士の性関係が主軸になっているので、それと別に万人向けの本もひとつ紹介しておこう。「飛ぶ蟹」

ちょっと不思議な話をいくつか含んだ短編集。オカワダ世界の豊かなイメージをあっさりした短編で重層的に楽しんでいただけます。

短歌ハッシュ8月号配信最終日

となりました。配信は セブンイレブン A4 カラー 60円 番号81090618 です。
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今回はツイッターで知ったネットプリントの合同配信企画 紙街01 に参加させていただきました。テーマは「海のいきもの」で、イラストだけのものから文章主体のものまでさまざまなネプリが揃いました。主宰の黒崎さんがとりまとめたモーメントがありますのでご興味があれば閲覧ください。


うちのネプリはいつも通りのイラスト×短歌8首で、モチーフには海藻を選びました。
短歌は「海」もしくは「海松(見る)」をテーマにしています。

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イラストの色合いが優しいふんわりした雰囲気なせいか、集まった歌もふわっとしたのが多かったかな。
わたしは「海藻」と「回想」を掛けて詠みました。あと、「みる」という音を無理やりねじ込みましたw 本当は「海松」をもっとうまく使いたかったんですが。

上記のイラストで、海松は濃い緑の円形で描かれているヤツです。日本の伝統的な文様で、松に似ていることから松と同じように豊かさや稔りを象徴する吉祥としてきものの柄にも使われています。ずっと描きたいと思っていたモチーフでしたので楽しく描きました。

紙街の企画は今後も定期的に続けるそうですので、また機会があれば参加したいなと思っています。主宰の黒崎様、とりまとめありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

たんたん短歌 短歌の目/7月

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こんばんは。また駆け込みですみません、短歌の目に参加します。よろしくお願いします。

イベントについては↓下記リンクをクリックください。

http://tankanome.hateblo.jp/entry/2017/07/10/000000




1透
 母の老い見ては心で腕を張る浸透圧に抗うように

2ホイップ
 ホイップで飾ったセリフを聞き流す植物性でできてるんだな

3果
 就職の決まった息子の帰省待つひと月ぶんの缶ビールと

4ぺんぎん
 ぺんぎんとパンダはお互い似ているとすれ違ったら思うんだろうか

5短夜
 いずこかでタクトが振られているのだろう短夜を破る蝉の合唱


自由詠み 「あつい」

はじっこのここも夏の真ん中でいつまでたってもさめない珈琲




今年は長年憧れだった睡蓮を咲かせることができました。この花は2つ目で、最初より少し小振りです。
ほんの2~3日しか、しかも昼の数時間しか花は咲かないんですね。儚い。


なんか、儚い歌が多い今月でした。しらずお盆モードになっているのかな。
暑いですがお盆までに片付けることがいろいろ。頑張らないと。ではまた来月お会いしましょう!

短歌ハッシュ配信中です & 一周年!

おかげさまで短歌のネプリ「短歌ハッシュ」の配信をはじめて一年を迎えました

常連のななさんがツイッター告知を一年分まとめて振り返ってくださっています。ありがとうございます。
通知が来てびっくり、嬉しい!壮観っ!よかったら見てくださいませ☆
http://library7.hateblo.jp/entry/2017/07/13/194150


それで今日は重い腰をあげて、わたしも一年ぶんのイラストを振り返ってみます。


初回は7月のはじめ、文フリ札幌の折本フェア参加。執筆中だったお話のモチーフ山鳩です。


8月は夏の夜空とくじら。浮世絵っぽい絵柄と和な構成で。


9月はたぬき。古い日本画のたぬきをアレンジして葡萄を取り合わせました。


10月は秋の花と虫。月がきれいなころなので月のイメージと。


11月は旅行できものの染色技術「伊勢型紙」のみごとさに触れてその雰囲気を。


12月はアニメっぽく楽しい雰囲気で雪景色をゆく猫の姐さん。見世物ポスター風です。


明けて1月は干支。とりさん、ひよこちゃん


2月は植物図鑑風です。旅行した先の立て看板をメモして調べて描いたもの。


3月は春、花!花!お話のなかで手向けのようにして描いた花束。


4月は桜に文鳥。どんどん咲いていくのに合わせて絵も咲かせていきました。


5月はこいぬ。琳派のころっころを目指して毬との組み合わせで。


6月は梅雨だけどありふれたかんじじゃないものを、と。SFコミック調でたんぽぽの綿毛。


これで12枚一年分です。

「気楽に参加できてほかにはない楽しさがある短歌ネプリをやれないかなあ。カラーイラストと組み合わせて文庫カバーってどうかな?絵の勉強になるしうちの印刷機のインク目詰まり防止になるし!」

ってかんじで始めて、目標の半年を過ぎてあっというまに一年です。みなさん、ありがとうございました!
常連の方々をベースにある程度いろんなひとが立ち寄ってくださいました。短歌へのスタンスもそれぞれ。これからも間口の広いネプリとしてやっていけたらと思います。よろしくお願いします。



☆☆☆



そして最新号はこちら、くるみの雌花を擬人化した女の子と骸骨です。


こちらは16日までセブンイレブンで配信中です。( 05875404  A4 カラー )  ぜひ出力してみてくださね。


☆☆☆

それから、一周年企画で「過去作から自分の好きな自分の短歌を教えてください」というのをやっています。自分は団体に属していないしネットの短歌の集いみたいなものにも参加していないのでみなさんの「好み」をお聞きするのも楽しいなーという俺得企画です。
夏らしくおめでたい「出目金」イラスト☆ A3 白黒 コンパクトに折りたたんで読めるデザインで、読み終えたら文庫本カバーにもできるようにします。

参加はツイッターのDMに直接お寄せ下さいませ。お待ちしています。



たんたん短歌 短歌の目/6月

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先月逃してしまったので今月はなんとか。短歌の目、駆け込み参加します。
題詠は今とりかかり中の物語からイメージして作ったので伝わり切らないかとは思いますが読んでやって下さい。よろしくお願いします。

イベントについては↓下記リンクをクリックください。

短歌の目6月のお題です - はてな題詠「短歌の目」

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タイトル:たぶんくるみたかったのだとおもう


1. クリーム
「暴力」をほんとうのそれをまだ知らないクリームブリュレと同じように

2. 溝
流されてU字溝に降り積もるキンモクセイとBB弾と

3. 万緑
万緑のなかの 一花( ひとはな )ブラウスのしたでひかりを放つ包帯

4. 雨
壁伝いきみから届くよ雨音にすり替えられたモールス信号

5. きみ
障りない事ばかり言い ( さわ )れないまま去ったきみ雨がつづくね


テーマ詠み:衣服

くたびれた梅雨の空を映しをり浴衣とカッター並べ干せば

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テーマ詠みは完全に日記だw

ちかごろめっきり母が老いてきて実家との往復をすることが増えました。
以前から植物園を定点観測的に一年眺めたいなと思っていたので、これからときどき長居公園に立ち寄ろうかなと。温室がないのが残念ですが、自然史博物館も隣接していてシロナガス鯨の骨格標本がどどーんと吊ってあります。自然全般についての図書資料がそこそこあり、植物園や博物館に入らなくても閲覧できますのでご興味あればいかがでしょう。
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公園の北東、カフェ・デュ・フルールという喫茶店で休んでから一駅むこうまで歩きました。このお店は同人小説をちょこっと置いてらして見本をゆっくり読めます。ひとつ買って帰りました。


最近カフェで同人小説を置くこころみをちょこちょこ見ますね。なんでもそうだけどお店のひと自身がそれにこだわりを持っていらっしゃる場所はまた足を運びたくなります。置かせてあげているだけ、みたいなのとはやっぱり違う。カフェって珈琲を飲みに行くだけじゃなくて出会いの場だから。


ではまた来月、よろしくお願いします!